第176球「35cm分高く」(2004.7.29)

 「投手として試合に出るならば、他の選手よりも35cm高いところから野球に取り組まねばならない。だから、投手は他の選手よりも高く志を持って、できることなら普段から35cm高く(=マウンドの高さ分)意識を持って野球に取り組むべきだ」

 そんなことを某野球人から言われたことがある。マウンドに登るからには、それなりに覚悟が必要だぞ、ということを端的に言い表しているのだが、なかなか核心を突いた言葉だなぁ・・・と素直に思ったものだ。

 以前選手の出席事情で急遽登板させた選手が、「前日からの準備があるから、できるだけこういうことは避けてほしい。」と俺に苦言を呈したことがある。やむを得ない事情で登板させてしまったので、申し訳なかったのだが、逆に俺はそういう心意気を聞いて嬉しささえ感じたものだ。まさに「35cm」の意識だ。

 TWINSではできる限り予告先発をするようにしている。そして先発を主将である俺が、通知する。そうすることがマウンドに登る選手への最大限の敬意である、と俺は思っている。そして彼らは準備するのだ。最高のマウンドにするために。最高の試合にするために。

 野球は試合に出ている9名+ベンチ+応援に来てくださる方々が、力を出し合って初めて成り立つものだ。しかし、そのベースになるのはやはり投手だ。投手が試合を作るように投げ、投手にそう投げさせるように野手が守り抜くことで、試合というものは原型ができていく。特にTWINS野球はそういう野球を愚直に目指している。

 だからこそ、マウンドに上がる選手は「35cmの意識」を持っていってほしいと思う。そして守る野手はその意識を壊さぬように、全力で支えていってほしいと思う。