第84球「トスバッティング」(2002.8.23)

 野球を見ていて、「ああ、この人出来るな」と感じることができるプレー、それはキャッチボールとトスバッティングである。この二つとユニフォームの着こなしがびしっとしている野球人は多分うまいんだろうなぁ・・・とある意味先入観にも似た感覚を持ってしまう。野球の基本中の基本である。

 トスバッティングは、相手から投げてもらった緩いボールを正確に打ち返す練習である。ポイントは以下の2点だ。1.自分の打つポイントまでじっくりボールを待つ。2.いかなる悪球であれ、正確に投手にワンバウンドで打ち返す。これがトスバッティングのすべてだ。

 ここで言う1.じっくり待つ、というのは変化球を打つことにも通じることだが、下半身の粘りがないとできない。上半身が突っ込んでしまうのでは、自分のベストスイングが出来ない証拠だ。そして2.に言う正確に打ち返す、というのはバットコントロールを自在にするということだ。もちろんボールをしっかり見ていなければ、そのバットコントロールも意味がなくなってしまう。内角球を引っ張ったり、外角球を流したりするのも、バットコントロールだが、逆に内角球を投手に向けて追っ付けて打つのも、外角球を被せるように投手に打ち返すのもある意味究極のバットコントロールだ。この二つの技術・心構えをまともに反映する練習、それがトスバッティングだ。

 トスバッティングのいいところは、決して難しいことをやっているわけではないので、上記2つのポイントを確かめながら、「修正」していくことができることだ。目的は試合で快打を飛ばすことなのだから、トスバッティングでは必ずしも調子が良くなくてもよいのだ。大事なのは、トスバッティングでポイントを掴むこと。最後の3球くらいまでに感覚を取り戻しておけば御の字だ。

 だから、トスバッティングでうまくいかない時があっても、決して冷静さを失ってはいけない。一球一球丁寧に打っていくことで、バッターボックスに入る自分に必ずプラスになるようにしなければならない。試合に出る選手はそれくらいの気持ちでトスバッティングに取り組むべきである。ベストスイングの第一歩を踏みしめるべきである。