第82球「想像を超えるプレー」(2002.8.19)

 以前ある元プロ野球の投手の書いた本に、「登板前夜自分で試合のシミュレーションをあれこれ考える。そうすると、どう考えても二点差くらいで自分が勝っている。ただしその通りに試合が運んだことは今まで一度もない。試合のどこかしこに自分の想像を超えたハプニングやミスが生じる。これが野球の本質なのだ。」という趣旨の一文があった。言いえて妙とはまさにこのことだ。

 目に見えるものかどうかは別にして、超ファインプレーやまさかのエラーは試合の中で必ず登場してくる。試合の流れや勝敗の行方を左右する。そうやって奪ったり、防いだり、与えたり、逃したりした一点は、例えば一本の長打で挙げた一点とは点数は同じかもしれないが、その重みは比べるべくもなく大きいものに思える。なぜならそれは、試合の流れを決定付ける得失点であるからだ。

 TWINSのみならず、野球チーム全般に言えることだが、いい時は物凄い力を発揮するものの、いったん歯車が狂うと脆くも崩れてしまうチームが多い。それは試合の流れを掴めればうまく事を運ぶことが出来るが、逆に流れを食い止めたり、封じ込んだりすることができない。「悪いときは悪いなりにまとめる」という試合運びを追求していくことが、今後の安定した戦績に繋がっていくことと確信している。

 しかし、これを追求することは容易ではない。こうやってコラムを書きながら考えてもある意味無駄だ。机上論では推し量れない部分をどのように乗り越えるかは、まさにグラウンドで答えを見つけるしかない。しかもその試合のカギを握る流れを踏まえて。だから、グラウンドの上ではできるだけ冷静に戦況を見つめられる状態でいたい。「悪いときは悪いなりに」という判断を付けられるようにしておきたい。それが勝利への一番の処方箋だと思う。

 だから、ミスが重なっても、劣勢であっても、それなりに試合をまとめていくことが大事だ。そうすればまだ挽回のチャンスはある。反撃のチャンスはある。チャンスを生かすか殺すかは実は自分自身にかかっている。チームとしての試合への取り組みにかかっている。ハプニングや想像を超える好プレー、珍プレー、凡ミスが出るのはある意味アタリマエだ。そこから試合をまとめるために個々が踏ん張れるかがグラウンドの中で試されるのだ。