第81球「バタバタするな」(2002.8.16)

 一年ぶりにグラウンドレベル用語を取り上げてみた。昨年は「きびきび」がキーワードだった(第38球参照)。今年は「バタバタするな」という言葉をグラウンドレベルで多用しているように思える。

 「わかっちゃいるけど、なかなかできないこと」これを出来るチームは強いチームである。出来ないチームは強いチームではない。強いチームが出来ること、それは一言で言うと「バタバタしない」ことだ。劣勢に立っても、ピンチに陥っても、自分を失うことなくプレーをすることができる。これはグラウンドレベルでは強さとして跳ね返ってくる。

 もうひとつ、強いチームが「バタバタするな」といえるのは、この言葉は、自分のチームが優勢で、相手チームが反撃してきたときや、相手に先制されてもまだまだ挽回可能な場合に使われる言葉であることだ。先制して試合の流れを掴み、優位に試合を進めることは勝つ野球の必須条件である。いったん掴んだ試合の流れを最後まで離さないことも。

 とはいえ、初回から最終回まで「バタバタするな」と言い続けるわけではない。これは逆にセンスがないなぁ、と思う。人間の集中力はそんなに長く続くものではない。この試合のどこがポイントなのか、絶対に気を抜いてはいけない時はいつなのか、試合の山場がどこなのか、さらに言うなれば、仮に先制されてもまだ勝機は十分あること、それがわかっているからこそ、使える言葉なのだ。わかっているチームは必ずそのポイントで反撃を仕掛けてくる。浮き足立った相手を見逃さない。逆にわかっているからこそ、相手の攻撃を最小限に食い止めることができる。冷静に一つ一つアウトを積み重ねることを怠らないからだ。

 どんな試合であれ、必ず山場はやってくる。どんなに大差がつこうが実力差があろうが、やってくる。そこでどう攻めるか、どう凌ぐかで勝負は決まる。そういう試合の節々で「バタバタするな」ということを改めて肝に銘ずる必要があるのではなかろうか。

 いつも言っているが草野球は自滅したほうが必ず負ける。自滅するときはチーム全体が「バタバタする」状態になる。そしてその敗戦の味は格別に苦い。これを何度も味わっているからこそ、「バタバタしない」野球を心がけたい。