第67球「普段着」(2002.3.21)

 とある試合で、「こいつらだけには絶対負けてはいけない」と思ったことがある。相手が名の通った強豪だからとか、野次られてカチンときた、とかそういうことではない。負けてしまえばおしまい、の一発勝負のトーナメント戦なので勝ちに行く、でもない。俺自身が、この相手に負けたくない、と強く感じることは、実は意外と少ない。

 いつも言うことだが、俺が一番したくないのは、「自滅負け」だ。だから、結局自分に負けた瞬間に、試合そのものが終わってしまう、というのが正直な気持ちだ。そういう意味では試合の勝ち負けは二の次なのだ、といえる。実際のところ、自分たちが自滅しないことで、自分たちが優位に試合を進め、結局試合にも勝ってしまうものなのだ。

 何でそう感じたのか、それは、その相手が「ちゃんと走らない」チームだったのだ。平凡な内野ゴロだと、一塁に走りこむのを諦めてしまう。フライならなおさら・・・。チームの方針や個々のスタンスは様々なので、そういうことをする相手チームには何ら文句を言う筋合いはない。しかし、だからこそ、絶対に負けてはならなかった。なぜなら、そういうプレーを否定するのがTWINSのスタンスだからだ。

 とかく大一番の前には「普段着のプレーを心がけよう」と監督なり、主将なりが円陣を組んで確認する。「普段着のプレー」とは、しっかりした野球をするのではない。チームのスタンスを忠実に守ることだ。したがって、練習やチャレンジマッチは、チームとしての「普段着」を創り上げるプロセスに他ならない。そして公式戦はその「普段着」を拠り所に戦うわけだ。

 「バッターボックスに入ったら、きっちりボールを叩いて、しっかり走る」というのが、TWINSの「普段着」だ。それを否定するプレーには、容赦ない罵声が味方ベンチから飛ぶことになる。先輩後輩球歴など、一切関係ない。それが、相手にとって一番嫌な攻撃であり、自分が打席でできる精一杯である。これはTWINSという草野球チームでの「普段着のプレー」であると信じているからこそ、俺はそれを否定するチームには「絶対負けてはならない」と思ったのである。

 実力差や時の運で負けることも多々あるか、と思う。実際、半分勝てれば御の字かな、と思うこともある。だが、「普段着」だけは頑固に守りつづけていきたいと思う。そして、そういう想いだけは、チームの中できちんと共有しておきたい、と思う。