第48球「148」(2001.11. 5)

 「148」これは、あるプロ野球選手のある日本記録の数である。殆ど日の目を見る記録でないばかりか、ある意味不名誉な日本記録でもある。しかし俺は、この数字は、常に打者に向かって攻めつづけた投手の勲章である、と思う。その打者に向かって攻めつづけた投手こそ、先のマスターズリーグ2001の開幕戦に先発した、村田兆治である。

 「148」これは「暴投」の数である。投手と捕手どちらに責任が有るか、という判断によって、記録上「ワイルドピッチ(暴投)」と「パスボール(捕逸)」に分けられるわけだが、この記録は明らかに村田兆治に責任がある、と判断された数である。そしてその暴投の殆どが「フォークボール」なのである。

 「速球で押す」「変化球でかわす」といわれるように、とかく変化球を投げるということは「逃げ」「弱気」に思われがちである。変化球は討ち取りに行くボールである。だからどんな軟投派投手であっても、討ち取りに行くようにリードをするのが大切になってくる。それをどう捉えるかは投手の資質に関わる問題なのだろう。

 村田兆治のフォークボールは時にはホームベースの3m手前でバウンドしそのままバックネットまで抜けていくことさえあった。だが、きっちり決まったときには、ストライクゾーンから鋭くボールゾーンにに落ちて、打者をきりきり舞いさせたのは、周知の通りである。逆に、中途半端な高さに落ちるようないわゆる「失投」は殆ど無く、まさに変化球で攻めたことの証であると言えよう。村田兆治が200勝を超える勝ち星を上げることができたのも、村田兆治という選手が未だに語り継がれるのも、実はそんな理由があるのではなかろうか。

 草野球において投手の果たす役割は、ただ投げるだけではない。試合を「造る」ゲームメーカーとしての比重が大きい。従って、逃げのピッチングはチームの逃げに通じる。ストレートであれ変化球であれ、逃げて投げるボールは打たれる。それがとどのつまり失投に結びつくものなのである。連打を浴びるよりも、四球を連発するよりも、そんな「失投」を守備陣は絶対に許してはならないのだ。逃げるチームなんかで野球やりたくないでしょ。マウンドに上がる者は(俺も含めて)、肝に銘ずる必要があると思う。村田兆治は攻めることで試合を造っていた。その結果「148」という数字を積み重ねた。素晴らしい数字だと思う。