第38球「きびきび」(2001.9.12)

 グラウンドの中での最近の口癖は「きびきび行きましょう!」である。試合開始時や攻撃が終わり守備につくときになると、よく口にする言葉だ。口に出すか出さないかはさて置き、最近のTWINSのキャッチフレーズとなっているように思える。

 野球の面白さでもあり、難しい部分でもあるのが、ちょっとした空白の時間である。いわゆる「間」というものである。投手の長いセットポジションを嫌って打者が打席を外すのも、投げにくい時に投手が牽制球を挟むのも「間」である。細かい「間」を挙げればきりがないが、その最たる例が「攻守交代」である。

 野球は、攻守交代がはっきりと分けられている珍しいスポーツだ。いくら守っても1点は取れないし、いくら打っても相手の得点は減らない。点を相手に与えず、相手から1点でも多く点を奪うことを目的とする野球では、「守る」と「攻める」の切替えが絶対に必要である。その切替えがきちっとできるかどうか。これはプレーヤーにとって非常に大事な要素である。そしてその要素は、技術的なものではなく、むしろ精神的な部分が大きい比重を占める。

 そしてもう一つ野球独特のルールは「必ず攻守交代は攻撃失敗で発生する」ということだ。3アウトを守備側に取られて始めて攻守交代になる。アタリマエなことだが、そこには「攻守」の切替えに加えて、「攻撃失敗したこと」に対する切替えも必要になってくる。それを攻守交代のわずかな時間の間で、行わなければならないのだ。

 そこで「きびきび行きましょう」である。前を向いて守備位置につきましょう、と。もう攻撃のことは忘れて守備に専念しましょう、と。こうしたほうが、何となく切替えがスムーズに行くな、と思うのは俺だけだろうか?。

 先日の試合で、俺がショートのポジションにつく前に内野手も外野手もすでに自分のポジションについていた事があった。前の回の攻撃で、いい当りの打球を相手に取られて少し沈んでいた俺の気持ちを奮い立たせてくれたのは、そんなきびきび動く守備陣の背中だった。野球が強い弱いという以前に、そういうところがTWINSの一番の魅力だと俺は思う。