第19球「親指」(2001.5.28)

 東京優駿(日本ダービー)がジャングルポケットの圧勝で幕を閉じた。あんなに口向の悪い(気性の悪い)ダービー馬は久々なのではなかろうか。騎手の言うことを聞かないであれだけ走ってしまうというのは、やはり実力が突出している証拠なのだろう。

 名騎手だった田原成貴曰く馬を卸す(乗りこなす)時に一番大切な要素は、「足の親指で馬を卸せるかどうか」なのだそうだ。要は、両足の親指の微妙な加減で馬に指示を与えるというわけだ。唯一馬と騎手の体が触れ合っている部分でコミュニケートする…凄い技術である。最近はその技術が無い騎手が多い…なんて苦言を彼は呈しているわけだが。

 俺がバッターボックスに立つときぐっと力を込める場所はただ一つ、左足の親指である。軸足をしっかり固定した上でボールを叩く。同じく俺が守る時に投手のモーションと共に守備体勢に入るわけだがその時にもぐっと力を込める場所は足の親指である。打球に反応し、そこからぐっと踏ん張って送球する。力が入らないと強い打球は放てず、一瞬の動きに対応できない。そんなわけで野球をする上でも両足の親指が果 たす役割は非常に大きく、だからこそ下半身を鍛えないといけないというわけだ。

 野球選手の体つきで最も特徴的なのは、お尻の筋肉の発達ぶりである。総じて野球人は大きいお尻をしている。それは別に鍛えているわけでなく、両足の親指に力を込めることで自然と筋肉が発達していくものなのだ。ジムに行ってのウエートトレーニングでは絶対に鍛えられることの無い野球に最も必要な力の源なのだ。

 毎年夏になると行われるTWINS名物炎天下の練習が今年も行われるだろうと思う。そういうキツい練習をした後は必然的に体中が筋肉痛になるのだが、とりわけお尻の筋肉が張っているのを感じたとき、俺は「野球の練習をしたなぁ」と思わずにはいられないのである。その練習についてはまたの機会にじっくり書いてみたいと思う。