第7球「味方」(2001.3.12)

 言うまでもなく、野球というスポーツは9人で守る(もっといえばベンチ等も含め参加者全員で守る)スポーツである。が、実際打球が自分の守備範囲に飛んできた時、自分の味方となるたった一つの味方、それはグローブである。

 俺のグローブは大学一年の時に使い始めたもので今年で延べ10年の付き合いとなる。相当の年季が入った代物なのだ。どうしても内野を守りたくて、それまで使っていた外野用グローブではなく、弟が使っていた内野用グローブを持参し「高校野球ではショートやっていました」と嘘こいてサークルに潜り込んだ…というのがそのきっかけだ。

 先日の練習で俺はちょいちょい打球をファンブルした。キャッチボールでも今一つボールをグローブの芯で掴めずにいた。その練習は、個人的に何となく締まりの無いものになってしまったのだ。そんなことを感じている時にふと気がついたのだ。「俺最近グローブ磨いたっけ…?」

 グローブは「型」が命である。「型」がしっかりしたグローブは、すっと出すだけで打球がすっと吸い込まれるようにグローブに収まる。硬式野球とは異なり、打球に回転がつきやすい軟式野球の場合、グローブの中でボールがファンブルする可能性は非常に高い。従ってグローブの果たす役割というのは、実はとても大きいのだ。

 「型」は人それぞれだが、基本的にグラブローションで汚れを落とし、保革した後にグローブの一番下側(いわゆる土手という所だ)にボールを挟み保管しておく。こうすることで、基本的な「打球を掴む部分」が作られ、それを使っているうちに自分の手にマッチした「型」はできてくる。

 エラーをグローブのせいにすることがある。どこかに悔しさをぶつけたい、という気持ちは分からないでもないが、それはグローブのせいではなく、グローブの「型」を作っていない自分のせいなのだ、というのをまざまざと思い知らされたのだ。というわけで、早速その夜グローブを磨いて型を作って保管することにしたのである。

 イメージ通りのプレーができれば無条件に野球は楽しい。そのプレーはチームの勝利にも直結する。チームメートが味方ならグローブも味方である。今年もこのグローブに助けてもらうことにしよう、と思う。